+
毎日部屋の窓から、ミカンの木(野生)を眺めていた。
花が咲き春になり、朝になるといっせいに虫が騒ぎだす。
葉っぱの重なりが風を知らせる。
鳥が来て「ぎゃー」と鳴き始める。
蜂が来るカナブンが来る、バッタ鈴虫蚊蝶甲虫。
朝には朝の、夜には夜の虫音。
花が、緑の実になって上に伸びてゆく。
果実は重みがまして下に垂れ下がり色づく。
いつしか、その上に雪が積もる。
食べきれないほどのミカンがなり、夜な夜なドサッドサッと大地に帰る。
そんな時間を何年も過ごした。
絵を描きながら過ごした。
ミカンの木に存在理由は無い。
そこに在って、生があって、育んで全てが球に成って理由が無い。
理由が欲しいのは私だ。
+